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大阪地方裁判所 平成7年(ワ)120号 判決 1995年6月13日

原告

ルートロック・レンタリース株式会社

右代表者代表取締役

岩本俊雄

右訴訟代理人弁護士

奥付賢治

山上東一郎

被告

株式会社アプラス

右代表者代表取締役

前田英吾

右訴訟代理人弁護士

西出紀彦

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が、訴外大崎幸子に対する別紙担保権目録記載の抵当権の物上代位に基づいて、平成六年一〇月一七日別紙債権目録記載の債権に対してした担保権の行使はこれを許さない。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  被告は、平成六年一〇月一七日、大阪地方裁判所より請求の趣旨記載の担保権の物上代位に基づく差押命令を取得した。

2  原告は、平成五年一一月一〇日、訴外大崎惠逸(以下「訴外惠逸」という。)を代表者とする株式会社朝日電気工業所に対し、金六五〇〇万円を、最終弁済期を平成六年八月一〇日として、年四〇・〇〇四パーセントの割合による利息を毎月三〇日限りの自由返済方式で支払う旨の約定で貸し渡し、同日、訴外大崎幸子(以下「訴外幸子」という。)及び同惠逸は、原告との間で、右金銭消費貸借契約に基づく債務を主債務として、連帯保証債務を負担する旨の契約を締結した。

3  訴外幸子及び同惠逸は、前項記載の連帯保証債務を被担保債権として、原告のために、自己所有にかかる別紙物件目録記載1、2の不動産(以下「本件不動産」という)を目的とする譲渡担保権を設定し、原告は、平成五年一一月一一日所有権移転の登記を経由した。

4  訴外幸子及び同惠逸は、原告に対し、本件不動産から発生する賃料を2項の連帯保証債務の弁済に充当する旨を約した。

5  右4の特約に基づき、原告は、平成五年一一月一〇日、訴外幸子及び同惠逸が訴外株式会社王将フードサービス(以下「訴外王将」という。)に賃貸中の本件不動産について生じた平成五年一二月分以降の賃料債権を譲り受けた。

6  訴外幸子及び同惠逸は、平成五年一一月一一日付、本件不動産の賃借人である訴外王将に対し、平成五年一二月分以降の賃料債権を原告に譲渡する旨の通知をなし、右通知は同月一三日に訴外王将に到達した。

7  原告の右債権譲渡の対抗要件具備は、被告の債権差押に先行しており、原告の担保権の行使は、担保権の目的となっていない財産に対してなされたものであるから、本訴によってその排除を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因第1の事実は認める。

2  同3のうち、原告が平成五年一一月一〇日所有権移転登記を経由したことは認めるが、その余の事実は知らない。

3  同2、4ないし6の事実は知らない。

第三  証拠<略>

理由

一  請求原因について

1  請求原因1の各事実は、当事者間に争いがない。

2  弁論の全趣旨によれば真正に成立したものと認められる<証拠略>によれば、請求原因2の事実が認められる。

3  請求原因3のうち、移転登記が経由された事実は当事者間に争いがなく、<証拠略>によれば、その余の請求原因3の事実が認められる。

4  <証拠略>によれば、請求原因4の事実が認められる。

5  <証拠略>によれば、請求原因5の事実が認められる。

6  官署作成部分については成立に争いがなく、その余の部分は<証拠>によれば請求原因6の事実が認められる。

二  以上のとおり、被告は、昭和六二年六月一日に本件不動産に別紙担保目録記載の抵当権を設定し、平成六年一〇月一七日、物上代位に基づき、差押命令を取得した。原告は、譲渡担保により本件不動産の所有権は取得するが、賃貸人たる地位は当然に取得せず、賃貸人がその地位を留保する旨の特段の意思表示があれば、賃貸人の地位は移転せず、その賃料債権のみを譲渡することができ、この賃料債権を譲渡し、対抗要件を取得した後は抵当権設定者の責任財産から逸失しているので、被告は物上代位権を行使できないと主張する。

抵当権の目的不動産が賃貸された場合は、抵当権者は民法三七二条、三〇四条の規定の趣旨に従い、目的不動産の賃借人の賃料についても抵当権を行使することができる。また、目的不動産が譲渡された場合、その譲受人は同法三〇四条の「債務者」に含まれ、これが譲渡担保権者であっても、本件のように、登記簿上にその旨が記載されていない場合は、同様に解すべきである。そして、被告の差し押さえた賃料債権は同法の三〇四条の「債務者の受くべき金銭」に該当するので、右差押えは適法である。

仮に、右原告の主張を認めれば、抵当権設定者により自由に賃料債権を譲渡することができ、これを抵当権者に対抗できることになる。そうすると抵当権者に物上代位を認めた趣旨が没却されることになるので、右主張を採用することはできない。

三  よって、原告の主張は失当であって、本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

担保権目録、物件目録、債権目録<略>

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